TAについて

三宅正志(三宅技術士事務所)

テクノロジーアセスメント(TA)の事例研究が実施されてから約30年が経過し、アセスメント的な手法が様々な分野でとられてきました。これらのながれと実施事例をふりかえってみて今後の課題をまとめてみます。

  1. アセスメントのながれ

    TAの事例研究が実施された昭和50年(1975年)前後にはアセスメントという言葉はまだ馴染みがなく、環境アセスメントが話題になる程度だったといえます。

    当時から約30年を経過した現在ではアセスメントは様々な分野で様々な意味でもちいられ制度化されてきています。環境基本法では「環境影響評価」として、労働安全衛生法では「労働安全衛生マネージメントシステムに関する指針」、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」としてリスクアセスメントを努力義務として定めています。具体的には「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」や「機械の包括的な安全基準に関する指針」でかなり詳細に示しています。

    このようにみてくると製造物責任法やISO14000関連の内容もアセスメントに深く関わっているようです。そしてもっと根元的な面として「技術者の倫理」がとりあげられてきているともいえるようです。

    これらに共通していることはやはり技術なり、人間の「マイナス」の面への対応が主となっており、ある意味ではいたしかたのないことかも知れません。

  2. TAの事例研究の実施例から

    実施例のなかの「メタノールの大規模利用に関するTA」と「塩化ビニル樹脂に関するTA」についてのふりかえってみます。

    「メタノールの大規模利用に関するTA」は昭和50年度に実施されたもので、国際的なエネルギー事情の緊迫化するなかで天然ガスのメタノール化輸入プロジェクトを前提とし、メタノールエネルギーは、石油代替エネルギーとしての新燃料油開発の重要な柱としての位置づけでのTAです。TAの結果としてはメタノールの燃料としての長所である低公害性が認識され、産油国において天然ガスを大量にメタノールに転換して輸入すれば、LNGなどに比べ遜色がないとされています。このTAでは技術の「マイナス」面とともに「プラス」面を重要視している特長があり、TAらしいといえますが、近年おきている原料面でのとうもろこしなど食糧確保のための大規模な投機がなされ、このメタノールの原料化という思いがけない人類の生存にかかわる課題が出てきていることも現実です。

    「塩化ビニル樹脂に関するTA」は昭和51年度に実施されたもので、PVCに係わるシステムは既に開発され社会的に定着したものであり、TA手法を既開発技術の見直しに対しどのように適用すればよいかをさぐる事例研究として位置づけています。したがって今後の性能改善の可能性や市場性の拡大などがまとめられているとともに毒性の低い添加剤の開発等の課題が広範に整理されていますが先年発生したダイオキシンの問題は予測できなかった事態でした。塩素系廃棄物焼却過程でのダイオキシンの発生は当時不明であり、検討対象ではなかったことでした。

  3. 実施と見直しの制度化

    このような立場に立つと、TAの重要性は論をまたないところですので今後の展開としては、我が国の場合はやはりなんらかの制度化が必要ではないかとおもいます。そして実施事例のような労作の見直しシステムを構築することがTAの定着には不可欠ではないかと思います。

(2009年3月11日)